みなさんこんにちは、隊員1号です。お久しぶりです!
かなり気温も下がってきて、寒い日が増えてきました。ただ、まだ暑い日があるので服装に困りますね。
今回は、その服装、もっと言えば「ジーンズ」についてのお話です。
みなさんに質問です。
「”ジーンズ”って何ですか?」
デニムのズボン!はい、他には?色は?形はどんなものですか?
デニム以外で作ったら、それはジーンズになりますか?
なじみ深いモノについて、改めて「それって何?」と聞かれると、難しいですよね。
ハッキリとこういうもの、と答えられる人は少ないんじゃないでしょうか。
代表に質問されたとき、私はわかりませんでした!
というわけで、今回のテーマは「ジーンズとは何か、定義してみよう!」です。
なぜ改めてジーンズを定義してみるのかというと、SEやMBSEについて、身近な実例を使って学ぶためです!
SEは、ざっくり言うと「人が何となくやっていることを、誰もが理解できる形にする」考え方です。その最初の一歩が「定義づけ」。これから作るものが何なのかをはっきり決めて、関わる人の間で意味の食い違いが起きないようにするルールです。
正直、難しいと感じました。ジーンズは普段履いていますが、いざ「ジーンズとは何か」と聞かれると、うまく言葉にできません。普段使っているものを、改めて定義から考えるのは、思った以上に難しいことでした。
AIを先生役にして、定義づけを勉強してみた
そこで、AIと一緒に勉強してみることにしました。
やり方はシンプルです。
AIに答えを教えてもらうのではなく、AIが定義づけの手順に沿って問いを出し、私が自分の言葉で答える。
私の答えに抜けや矛盾があれば、AIが指摘してくれる。この繰り返しです。
定義づけの手順は、大きく9つのステップに分けられるようです。今回は、この流れに沿って問いが出されました。

ポイントは、いきなり「ジーンズは〇〇である」と書かないことだそうです。
まず何のための定義かを決め、関係者や使われ方から「何をするものか」を整理して、それから「何でできているか」を考えます。
最後に定義の文章にまとめて、迷いそうな例で確かめます。
辞書を引いてみたら、答えがバラバラだった
最初に、世の中にすでにある定義をAIにも調べてもらいました。すると、答えは一つではありませんでした。
- ある辞書:「細綾織りの丈夫な綿布」。そもそも、ズボンではなく生地の名前として載っています。
- 別の辞書:「デニムでつくったズボン」。
- ジーンズソムリエの考え方:リベットによる補強や、頑丈な縫い方といった「構造」を持つズボン。なので、コーデュロイで作ってもジーンズになるそうです。
生地で決めるのか、形で決めるのか、作り方で決めるのか。
何を中心に置くかによって、「これはジーンズか」の答えが変わってしまう、ということが分かりました。
「ジーンズの量産を企画する人」になりきってみた
AIからの最初の問いは、「何のためにジーンズを定義するのか」でした。
私は「関係者の間で、意味の食い違いが起きないようにするルールを決めるため」と答えました。
すると、「方向は正しいけれど、まだ一般論。誰が、どんな場面で迷うのかまで考えてみよう」と返されました。
そこで、自分を「ジーンズの大量生産を企画するプロデューサー」という立場に置いてみました。
この立場で、関係者の間で「それってジーンズって言えるの?」ともめそうな場面を考えると、こんなものが浮かびました。
- 生地が分厚い、もしくは薄いものはどうか
- デニム生地ではなかったら?また、 手を加えた新しいデニム生地は、どこまで許されるか
- ポケットがなかったら?
- インディゴ以外で染めていたら?
ここでAIに言われたのが、「この4つに、今すぐ答えを出さないこと」。
答えを出すための物差しが、まだないからです。物差しは、ジーンズが誰のために、何をするものなのかから決まります。物差しがないまま答えると、理由を聞かれても「なんとなく」としか言えなくなってしまうのです。
関係者を洗い出してみた
次の問いは、「ジーンズを作って売るまでに、どんな人が関わるか、そしてその人は何を求めているか」。
綿花の農家から販売業者、環境保護団体まで、思いつく限り挙げてみました。
- 直接の関係者:消費者、縫製業者、デザイナー、販売業者、綿花の農家など
- 一見関係なさそうな関係者:運送会社、環境保護団体、モデルなど
- 思いつかなかった関係者:行政(品質表示の決まりを作る)、家具の持ち主、加工の作業者
3つ目は、AIに指摘されるまで全く思いつきませんでした。
家具の持ち主については、昔、リベットが家具や鞍を傷つけるという苦情が出て、ジーンズの作りが変わったことがあるようです。
加工の作業者については、色落ちさせるための加工で健康被害が出て、その加工がやめられた例があります。

ジーンズの外側には、関係者や、影響を受けるものが繋がっています。
もう一つ指摘されたのが、私の挙げた関係者が求めるものに、「たくさん仕入れてほしい」「マージンがほしい」といった、事業や取引に対するものが混ざっていたことです。
定義づけで知りたいのは、ジーンズという”物”に何を求めるかなんだそうです。
そう言われて書き直してみると、作る側の関係者からは「綿花で作るものであり続けること」「縫製方法に大きな変化がないこと」など、今の作り方を変えないでほしい、という声になりました。
一方で、デザイナーは新しさを求めます。
最初に挙げた「デニム以外は?」「インディゴ以外は?」という悩みは、実は関係者どうしの求めるものがぶつかっている場所だったと分かりました。
一番苦労したのは「要求」の洗い出し
関係者が見えてきたら、次は「ジーンズが満たすべきこと」、つまり要求を書き出しました。
今回、私が一番苦労したところです。私の考えだけではうまくまとまらず、気付かされることが多いステップでした。
AIから出されたルールは一つだけ。「デニム」「リベット」「インディゴ」のような、材料や作り方の名前を使わないこと。
最初に書いたのは、こんな要求でした。
- 簡単に破れないこと
- 汚れにくいこと
- 家具を傷つけないこと
- 足がこすれて痛くならないこと
- はきやすいこと
すると、「『簡単に』『はきやすい』は、満たしたかどうかを確かめられない」と指摘されました。人によって受け取り方が違うので、できあがったジーンズを前にしても合格かどうか決められないと言われました。
確かに。
そこで、「ポケットの口や股など、力のかかる所が、しゃがむ・座るといった毎日の動作で裂けないこと」のように、どこが、どんな場面で、まで書くように直しました。
「ひざや股関節の部分に伸縮性があること」と書いたときには、「また手段が入り込んでいる」と言われてしまいました。本当に満たしたいのは「ひざや股関節を曲げても、動きを妨げないこと」で、伸縮性はそのための手段の一つにすぎません。型紙にゆとりを持たせるという、別の手段もある、と指摘されました。
確かに。
さらに、「どのように使われるか」と問われたときに自分が見つけた「体になじむ」「色落ちを楽しむ」といったジーンズらしさを、要求に入れ忘れていたことも指摘されました。
確かに。確かに。
見つけたニーズは、必ずどれかの要求に反映させる。そのつながりを確かめることが、トレーサビリティの第一歩だそうです。
ここで分かったのは、要求は「答え」ではなく「なぜ」を書くものだということです。
リベットは答え。なぜリベットを打つのかといえば、裂けないようにするため。
書くべきなのは、こちらのほうでした。確かに、が多くなってしまう時間でした。
気づかなかった穴が結構あった
ジーンズを買ってから手放すまでの場面を順に考えてる中で、正反対の要求が出てきました。
洗濯の場面で、「色落ちしないでほしい」人と、「色落ちしてほしい」人がいるのです。
使い込んで色が落ち、自分になじんでいく変化を楽しむ。これは、ほかのズボンにはない、ジーンズらしさです。
そして、最初に挙げた4つの悩みに答えを出すステップで、AIから「判断どうしが矛盾している」と指摘されました。私は「デニムは必須」の理由に「経年変化を楽しめるから」を使ったのに、必要な要素を選択する問いの中では「色落ちは選べる(望まない人もいるから)」としていたのです。物差しにしたものを選べる部分にしてしまうと、理由が成り立ちません。
一つずつの判断を見ているだけでは、気づけない矛盾でした。
考えた末、経年変化は「選べる部分」にしました。すると今度は、「それなら、デニムが必須な理由がなくなる」と返されました。経年変化を除いてジーンズを区別する決め手が「高い丈夫さ」になると、丈夫な生地はデニムだけではないからです。そこで、生地も「デニムに限らない」ことにしました。一つの判断を変えると、ほかの判断にも影響が出る。
気づかなかった穴は、思った以上にありました。
例を当てはめてみたら、定義が全然足りていなかった
ここまでの材料をもとに、自分で最初に書いた定義がこれです。
ジーンズは長期間使用するため、他のズボンに比べて高い丈夫さを持ち、デニムなどの破れにくい厚手で丈夫な生地を使っているズボンである。
これなら、色落ちは選択できるし、デニム生地じゃなくてもいいはず!これで完成、と思ったのですが、AIから「判断に迷いそうな例」を6つ出されて当てはめてみると、すぐにほころびが見つかってしまいました。
- 厚手の帆布で作った、補強のないワークパンツ:厚手で丈夫なので、ジーンズになってしまう。
- 厚手の綾織りの綿布で作ったチノパン:最初は「綿布は丈夫ではないから違う」と答えました。ところが、「デニムも綿の綾織物」と指摘され、この理由は成り立たないと分かりました。
つまり、生地だけでは、ジーンズとほかの丈夫なズボンを区別できないのです。
このように事例を挙げてみると、定義が全然足りていなかったことに気づきました。アチャ~。
では、ジーンズはほかのズボンと何が違うのか。
AIからのヒントは、ジーンズの始まりでした。
1873年、Levi'sはズボンの形を発明したわけではなく、それまであった作業ズボンにリベットで補強を加えて、新しい種類のズボンを生み出したのです。
ジーンズを部品に分解してみると、丈夫さを支えているのは、生地だけではないことがよく分かります。

たどり着いた私の定義
それを聞いて、「補強」を足し、定義をこう書き直しました。
ジーンズとは、長期間はくために、厚い生地に補強を加えたことによって、高い丈夫さを持っているズボンである。
もう一度、6つの例を当てはめてみます。
- 補強のない帆布のワークパンツ → ジーンズではない(補強がない)
- チノパン → ジーンズではない(一般に補強がない)
- 補強のあるコーデュロイのズボン → ジーンズである(厚い生地+補強)
- デニムのスカート → ジーンズではない(ズボンではない)
- 色落ちしないように加工したデニムのズボン → ジーンズである(色落ちは選べる)
- デニムのショートパンツ → ジーンズである(丈は決めていない)
今度は、すべて自分の判断どおりの結果になりました。
ただ、これが唯一の正解というわけではありません。
実は、AIが別に作った下書きの定義では、主な縫い目を頑丈な縫い方で縫うことまで必須にしていました。
ジーンズ愛好家の立場なら、経年変化を必須にするかもしれません。どれも間違いではなく、誰が何のために使う定義かが違うだけです。
自分の判断に、自分の言葉で理由を付けられるようになったことが、今回の一番の収穫でした。
やってみて思ったこと
最初にも書いたとおり、正直、難しかったです。生活に馴染みあるジーンズなのに、「何か」を言葉で決めようとすると、穴だらけでした。
AIと一緒に勉強してみて良かったのは、答えを教えてもらうのではなく、問いを出され、自分の答えの抜けや矛盾を指摘してもらえたことです。判断を下すのは、あくまで自分。だからこそ、なぜその定義にしたのかを、自分の言葉で説明できるようになりました。
そして、身近なものを分解して考えるのも面白いと感じました。関係者を洗い出し、要求を「なぜ」で書き、例を当てはめて確かめる。
この流れは、ジーンズに限らず、仕事の書類や身の回りの道具など、どんなものにも使えそうです。
SEでは、この定義をもとに、具体的な製品を設計していきます。MBSEでは、定義や要求、部品のつながりを一つのモデルとして残し、なぜそうなっているのかを後からたどれるようにします。
そのお話は、また別の機会に。
みなさんも、身の回りのものを一つ選んで、「これって何?」を定義してみてはいかがでしょうか。
面白いですよ!
※ジーンズの辞書での定義(「細綾織りの丈夫な綿布」)(出典元:『デジタル大辞泉』小学館/コトバンク掲載)
https://kotobank.jp/word/%E3%81%98%E3%83%BC%E3%82%93%E3%81%9A-1550670
※ジーパンの辞書での定義(「デニムでつくったズボン」)(出典元:『精選版 日本国語大辞典』小学館/コトバンク掲載)
https://kotobank.jp/word/%E3%81%98%E3%83%BC%E3%81%B1%E3%82%93-3181597
※ジーンズソムリエの考え方(構造でジーンズを定義する)(出典元:『ジーンズ&デニムらぶログ』ジーンズソムリエ公式テキストを参照した解説)
http://js.cotoz.info/word/jeans
※1873年のリベットの特許、1937年の家具や鞍への苦情によるリベットの変更(出典元:『History of the Levi's 501 Jeans』Levi Strauss & Co.)(英語)
https://www.levistrauss.com/wp-content/uploads/2014/01/History-of-Levis-501-Jeans.pdf
※色落ちさせる加工(サンドブラスト加工)による作業者の健康被害(出典元:『Call for an end to Jeans Sandblasting』Clean Clothes Campaign)(英語)
https://cleanclothes.org/news/2010/call-for-an-end-to-jeans-sandblasting
